映画「ブレードランナー」デッカードブラスターの水鉄砲に塗装してみた
映画「ブレードランナー」に登場する拳銃、通称デッカードブラスター
ハリソン・フォード演じる主人公のデッカードが使用する架空の銃ですが、現在モデルガンなど様々なレプリカが出回っています。
その中でも一番安価ながら再現度の高い水鉄砲のブラスターを入手できましたので
映画や銃の解説も交えながら、入手した水鉄砲の塗装工程を公開します。
映画「ブレードランナー」の銃デッカードブラスター
デッカードブラスターとは映画「ブレードランナー」シリーズに登場する架空の銃の事です。正式名称ではありませんし主人公のデッカードだけが使用している訳でもありませんがファンの間ではデッカードブラスターの名で定着しています。
近未来のSF作品でありながら現代の実銃に近いデザインと独特なフォルムを併せ持ち映画ファンからミリタリーファンの間でも人気の高い銃であります。
ブレードランナーってどんな映画?
人類は「レプリカント」と呼称される人間そっくりのアンドロイドを発明し労働力として使用していましたが彼らレプリカント達の中には感情が芽生え、人間に反旗を翻し脱走する者が現れました。
人間社会に紛れ込んだレプリカントを見つけ出し射殺する任務を負うのが警察の専任捜査官「ブレードランナー」です。
そもそも人間とレプリカント2つの違いは何なのか、人間らしさとは何か?そんなテーマを扱った考えさせられる映画です。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
「ブレードランナー」はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」というSF小説が原作になっています。
未来では様々な生物が絶滅しており、生物を所有する事が一種のステータスとなった世界が舞台で人工の電気羊しか飼えずいつか本物の羊を手に入れたいと夢見ている賞金稼ぎのデッカードが人間社会に溶け込むアンドロイドを処理していくというストーリーです。
原作者のフィリップ・K・ディックは多くのSF作品を世に残しており「トータル・リコール」「マイノリティ・レポート」他数々の原作を執筆しています。
原作からの改変で作者と揉める
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は1982年に「ブレードランナー」というタイトルで「エイリアン」のリドリー・スコット監督の手により映画化されましたが
この映画化は人物や設定、物語の結末などが大幅に変更されていて原作者のフィリップ・K・ディックとは大揉めに揉めました。
当初はマーティン・スコセッシが映画化権の取得を目指していましたが失敗しのちに「デューン/砂の惑星」の監督に内定していたリドリー・スコットがデューンの製作が頓挫して手が空いたところにオファーを受けてブレードランナーの監督になりました。
まず映画化権は売ったものの、その後の話は全く作者の耳に入ってこずに
映画の話を初めて知ったのは雑誌で映画製作進行中の記事を読んでからでした。
その後も「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を原作として売り込む事を禁止されたり、今後はアンドロイドではなく「レプリカント」と呼べと強要されたり
そもそも監督のリドリー・スコットが原作を読んでいなかった事も分かり
原作者の映画製作側に対する印象は最悪でリドリー・スコットの「エイリアン」をぼろ糞に貶したりと関係はかなり悪化しました。
そしてフィリップ・K・ディックは「ブレードランナー」公開直前の1982年3月に
脳梗塞により53歳の若さで亡くなり、ついに映画の完成を観ることはありませんでした。亡くなる直前に和解したそうですが、完成版を見られなかったのは残念でしたね。
ブラスターデザインの謎
このブラスターは銃口と引き金(トリガー)が2つずつ付いてるのですが特にこれが何なのかっていう設定はありません。
最初にデザインを描いたのはアメリカの工業デザイナー、シド・ミードでした。しかし監督リドリー・スコットが未来的すぎるとして採用されませんでした。
シド・ミードによる初期デザインのブラスター、未来的過ぎると却下されました。そこで急遽「未来的過ぎないハードボイルドな銃」というコンセプトで
映画の小道具スタッフが現実に存在する実銃を加工、もしくは型取りして複製したものを現物合わせで製作したと言われています。
リボルバー式の弾装とボルトアクションライフルの機関部、2梃分の銃の部品を使い
更に追加の装飾を施した物となっています。
元となったステイヤーライフル
映画の撮影に使用されたプロップモデルの現物は長らく行方不明とされてきましたが
2006年に現物が発見され、後にオークションにかけられたところ日本円換算で2千万円以上の値で落札されました。
高木型ブラスター
日本のブラスター研究者の第一人者、高木亮介氏が製作したデッカードブラスターです。高木亮介氏は1982年の映画公開から30年以上も映画のデッカードブラスターの再現に取り組んできた造形作家です。
インターネットの無い時代、映画雑誌の写真記事やビデオの荒い映像を頼りに研究を続けてきましたが
2006年に撮影プロップが展示され、2009年にオークションに出品された際にはアメリカまで取材に行きそして完成されたモデルガンが発売されました。
細部は高木氏の解釈による独自アレンジのため高木氏の名前をとって「高木型 弐○壱九年式 爆砕拳銃」と名づけられました。
ブレードランナー2049で採用された留之助ブラスター
2017年公開の「ブレードランナー2049」では留之助(とめのすけ)ブラスターと呼ばれる日本のモデルガンが撮影用プロップとして採用されました。
映画評論家でもある中子真治氏の経営する「留之助商店」というお店から販売された
デッカードブラスターのレプリカモデルです。
こちらも高木型同様デッカードブラスターの再現に長年取り組んできたところ海外でも名が知られ、ついには留之助商店で販売しているブラスターを正式に撮影用プロップとして使用される事になりました。
レプリカを作り続けていたら本物になってしまったという、なんとも熱い話です。
高木型 弐〇壱九年式 爆水拳銃
留之助ブラスターが公式となってしまったため留之助商店のデッカードブラスターが決定版と認識されるようになりましたが留之助商店のデッカードブラスターは約8万円、高木型ブラスターでも6万円します。
そんな金額は出せないという人に朗報!高木型をベースに作られた水鉄砲のデッカードブラスターがあります。
高木亮介氏全面監修で水鉄砲とは思えない精巧な作りです。
グリップ部分も別パーツにして再現する徹底ぶりです。元々1,300円だったのが一時期5,000円あたりまでプレミアが付いていました。
今回私が入手したのがこの水鉄砲で未組み立ての物をワンダーフェスティバルで購入しました。
これ、水鉄砲として遊ぶ人ってどれくらいいるんでしょう?観賞用として購入する人が殆どなんじゃないでしょうか。
デッカードブラスターを塗装します
モナカ合わせの部品構成になっていて真ん中に目立つ合わせ目がくるのでゼリー状瞬間接着剤をパテ代わりにして接着と合わせ目消しを同時に行います。
接着剤が硬化したらヤスリで削って平滑にします。
途中で捨てサフを吹いてみましたが結構ヒケもありますね。ヒケのある部分にはSSP-HGを盛り付けて削ります。そして全体にヤスリをかけたら洗剤で洗って削りカスを落として改めて下地となるサーフェイサーを吹きます。
ここで使用するサーフェイサーはガイアノーツのメカサフヘビーです。
プラスチックの表面を溶かすほど強力な専用のプロユースシンナーを使って希釈する事で強い食いつきを可能にします。
参考資料
塗装に入る前に、カラーリングの参考にしたのは留之助ブラスターです。
去年のコミコンでは数種類のブラスターを実際に握ったり写真も沢山撮ってきたので
それらを参考にしながら好みのカラーリングを決めます。
こうして見ると箇所によって素材も違うようです。一体成型の水鉄砲なのでなるべく別パーツ感が出るように艶調整や色分けをしながら面倒ですが部分ごとに塗り分けます。
マスキング
既にベース色を吹いた後ですがマスキング作業に入ります。
塗料が入り込みそうな部分は念のためマスキングゾルを塗って塞いでおきます
完成
完成です。グリップ部分の色が明るすぎる気がしたので裏側からクリアーブラウンでコートしています。
色剥げや錆などのウェザリング(汚し塗装)をしようか迷いましたがこのままで止めておきます。
まとめ
水鉄砲とは思えないかっこよさです。仕上がりにも満足していますがいつかお金に余裕が出来たらモデルガンの方にも手を出してみたいですね。
それでは以上、『映画「ブレードランナー」デッカードブラスターの水鉄砲に塗装してみた』でした。