八王子市夢美術館「王立宇宙軍 オネアミスの翼展」に行ってきました
東京・八王子市夢美術館で開催されている「王立宇宙軍 オネアミスの翼展 SFアニメができるまで」に行ってきました。「新世紀エヴァンゲリオン」「トップをねらえ!」等を世に送り出してきたアニメ製作会社GAINAXが1987年に手がけたアニメ映画の設定資料からノートのメモ書きに至るまで関係資料が公開されていました。
監督の山賀博之出演のギャラリートークの様子もお伝えします。
「王立宇宙軍 オネアミスの翼」とは
1987年に劇場公開されたSFアニメで大阪の大学を出たばかりの平均年齢20台前半という若いスタッフが集まって立ち上げたアニメ制作会社GAINAXが初めて製作した作品であります。
現在、同会社社長を務める山賀博之が24歳という若さで監督・脚本を努めあげました。
架空の惑星のオネアミス王国で王立宇宙軍の中佐、シロツグ・ラーダットが初の宇宙飛行士に志願しロケット打ち上げを目指すという物語です。
会場となった八王子市夢美術館は歌手松任谷由実の実家「荒井呉服店」のすぐ隣です。
チラシの走り書きまで展示
館内は撮影可だったのでいろいろ写真を撮ってきました。特に貴重そうだったのが山賀監督の手書きのメモ類で手帳やノートなど大量に展示してありました。
それらも雑に書いたものではなく大学の講義ノートみたいにきちんとまとめて書かれてあってちゃんと読めるものになっています。
こういうチラシに書き込んだものまでしっかり保管してあるのは凄いですね。
たしか「トップをねらえ」も喫茶店で岡田斗司夫がテーブルに置いてあった紙ナプキンに思いついたストーリーを一気に10枚くらい書き上げてそれが全体の元になってるらしいですからね。(その紙ナプキンも残ってるのかなぁ?)
4分間のパイロットフィルム
会場内ではスポンサーのバンダイへのプレゼン用に製作されたパイロットフィルムも上演されていました。山賀監督曰く、プレゼン用のは完成版とはかなり違う雰囲気で「風の谷のナウシカ」っぽい雰囲気の物をわざと作ったそうです。
これは「誰も見た事の無いアニメを作ろうとしてるんです」とスポンサーに言ったところで分かってくれないし、どこも制作費は出してくれないので「ナウシカみたいなアニメを作ります」と説明するためにあえてそうしたものを作ったのだとか。
私はそんなにナウシカっぽいとは感じませんでしたが
異世界文字のタイポグラフィー
異世界感を作るのに効果的な演出として異世界文字のデザインがあります。
ひらがなやカタカナを置き換えたようなもので文字単体だけではなく象形文字など文字が出来あがる前の図形の段階から考えているそうです。街中の看板などいたるところに出てくるので異世界感を出すために一番最初に考えないといけないくらい重要な部分だそうです。
それで思い出したのが「スタートレック」のクリンゴン語なんですがあれなんか本当の言語学者が考案して実際に会話可能な言語として作ってあるので海外のマニアなんか実際に喋れる人もいますし、Netflixの「スタートレック・ディスカバリー」ではクリンゴン語字幕が選択出来ますからね。
工具や食器とか小物類のデザイン
このスパナやレンチなどの工具は作中には出てきてないらしいです。 他にも決定稿と判の押されてる物でも使われていないデザインがかなりあるのだとか。
例えばコーヒーを飲むシーンがあるからそのコーヒーカップをデザインするというやり方ではなく、その世界で使っていそうなものを片っ端から考案して描き起こしていく方法をとっていて、現場のアニメーター以外にも漫画家とかいろいろなクリエイターからデザインを集めていたそうです。
江川達也とか藤原カムイなどが参加していたのはファンの間では知られています。
空想と現実の中間くらいのデザインバランス
飛行機のデザインなどでも飛行機に詳しい奴に描かせちゃうと現代の飛行機になっちゃう。かといって詳しくない奴に描かせるとなんか構造に説得力の無いものが出来上がってくるので苦心したそうです。
実際に建築やってる人に建物のデザイン依頼して、上手いけどどこか突き抜けたところが無いので没にしたというそんな絵も展示されてました。
メカに関しては前田真宏が中心になって描いてたそうです。
美形ではない普通のヒーロー・ヒロイン
シロツグのデザインはそれまでのアニメのような見た目がかっこいい男として描かれていないのです。アニメチックな派手なデザインは抑えて実写映画寄りにしているのがうかがえます。
声もアニメ声優ではなく森本レオが演じているのもそういった狙いがあったのでしょう。王立宇宙軍のアフレコに関しては岡田斗司夫が語ってましたが、山賀、庵野、赤井、貞本、岡田たちみんなでアフレコしたテープを作って音響監督にこの通りに演技させるよう演技指導してくれと頼んで嫌な顔されたというエピソードがあって
実際に兵士の号令など赤井孝美のアフレコがそのまま使われたり、他にもシロツグがゲロ吐くところは貞本義行の声です。
山賀博之監督のギャラリートーク
今回は山賀博之監督が来て会場でトークを行いました。そのトークの内容が濃くて凄く面白かったです。
会場内には椅子が並べてあってマイクが設置された演壇があったのでそこでトークをするものとばかり思っていたのですが、監督はギャラリーの展示作品の前に登場すると、そこに掛けられたスケッチや設定資料に対してコメントしながら会場内を順序ごとに移動しながら喋りだしました。
そして集まった客も監督を取り囲みながら会場内を一緒に移動します。
トークの内容も興味深いものばかりでしたが、話す内容や喋りも上手くてこの人結構頭良いんだなぁと改めて関心してしまいました。
島本和彦の漫画「アオイホノオ」の中じゃ絵も描けないアニメも詳しくない無能の人物として描かれてるものだから、その印象が強すぎて本当に同一人物かと思ってしまうのも仕方の無い事です。
いつの間にかプラモデルも出てました
会場の出入り口ではパンフレットとプラモデルが売っていました。
プラモは4860円とかなりいい値段してました。PLUMというメーカーから去年発売したようです。
このメーカーは今でこそ美少女フィギュアや各種プラモデルを製作販売していますが本業は自動車のダッシュボードとかプラスチック部分の製造をしていた会社で社内にガチのロリコンが居てうちの技術力で美少女フィギュア作りましょうと社長らを説得してフィギュア業界に参入してきたという特殊な経緯があります(豆知識)
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OVA「トップをねらえ!」について少し触れています。
「トップをねらえ!」の脚本は岡田斗司夫名義になっていますが実際に執筆しているのは山賀博之です。これは「王立宇宙軍 オネアミスの翼」で名前の売れた山賀がその次回作として「トップをねらえ!」のようなロボットアニメの仕事が自身のプロフィールに残るのを嫌がり岡田の名前を借りたそうです。
どこかで吹っ切れたのか後に「まほろまてぃっく」の監督・脚本をやったりするようにはなるのですが・・・
まとめ
「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の公開された1987年前後は「AKIRA」や「機動警察パトレイバー the Movie」などクォリティーの高い劇場アニメが一斉に作られたアニメ映画全盛期ともいえる時代でした。
その中でも王立宇宙軍はヒット出来ずに大きな赤字を抱えてしまうのですが、エヴァンゲリオンが好きな人でしたら大系的に観ておくべき作品だと思います。
それでは以上、『八王子市夢美術館「王立宇宙軍 オネアミスの翼展」に行ってきました』でした。