映画『怒り』感想 3人の謎の男と山神の怒り ネタバレあり

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映画『怒り』の紹介です。「千葉編」「東京編」「沖縄編」という3つの舞台に現れる素性の分からない男との出会い。交わることの無い3つの独立したエピソードで構成されていますが3つで1つの群像劇となっていて切り離せません。

 

 

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あらすじ

夫婦を殺した犯人が逃走。
犯人の特徴は顔に三つならんだほくろ。
そして素性が分からないこと。
千葉の漁港に突如現れた田代哲也と地元に帰ってきた槙愛子。
東京で出会った大西直人と藤田優馬。
沖縄で出会った田中信吾と小宮山泉。
それぞれの土地に突然現れた3人に不信感を抱き始め、人間関係が揺らぎ始める。

キャスト

槙洋介:渡辺謙
槙愛子:宮崎あおい
田代哲也:松山ケンイチ
藤田優馬:妻夫木聡
大西直人:綾野剛
田中信吾:森山未来
小宮山泉:広瀬すず
知念辰哉:佐久本宝

映画の感想・見どころ

それぞれの人物との出会いと、疑いに至るまで、そしてその結果が見ていてとてもどきどきしました。
千葉で出会った愛子と哲也はいつしか恋愛関係に至りますが、殺人事件の犯人の特徴に哲也が似ていることから、愛子は犯人かもしれないと疑いはじめます。
それを察して消えてしまった哲也と、そのことで一層疑い始めてしまった愛子と父の洋介。
警察に連絡をしてしまったときの愛子の悲しみを演じる宮崎あおいの泣きの演技は素晴らしかったです。

東京で出会った優馬と直人ですが、ちょっとしたことでのすれ違いが悲しい結末になってしまいます。優しそうに見える直人が洗面台で前髪を切るシーンは、もしかして直人が犯人なのかも?と思われる演技でした。

沖縄で出会った泉と信吾は、犯人じゃないのかな?と一番最初に感じさせられました。
泉のあどけない少女の役が広瀬すずなのはぴったりでした。

 

この映画を見始めたときに、犯人は誰なのかを考えながら見ました。
最初は松山ケンイチが犯人なのか?と思わせながらも、もしかしたら綾野剛かも…森山未来ではないかな…と、見ている側にも疑いを持たせる構成でした。

松山ケンイチ演じる哲也と恋愛関係になる宮崎あおいの演技は、とってもかわいらしかったです。
警察に連絡をしてしまった愛子が泣くシーンはすごく辛かったですし、そのあとに犯人ではないと分かって、2人が電車の中で寄り添いながら座っているのは、見ていて安心しましたし、幸せになってほしい!と思いました。
森山未来演じる信吾の狂いっぷりはすばらしかったです。
気さくで優しい人に見えて、辰哉の家の食堂を壊すシーンは、犯人はこの人だったのか?!と驚く演技でした。

信吾と辰哉の最後のシーンは、佐久本宝の演技力の素晴らしさを感じました。
信吾の狂気と、辰哉の怒りがとても表現されていました。

そして私がこの映画で一番心が苦しくなったのは、優馬と直人のすれ違いです。
綾野剛が好きな私は、綾野剛を見るためにこの映画を見たといっても過言ではありません。だからこそ一番心にぐっときました。
突然消えた直人と、警察から直人について知っているか聞かれた優馬は、直人が家に居た痕跡をすべて消そうとゴミ箱に捨ててしまいます。
でもその電話は殺人犯についての電話でなくて、直人が亡くなっていたことの電話でした。

身寄りの無い直人の救いになっていた優馬。優馬の支えとなっていた直人。
実際に妻夫木聡と綾野剛が一緒に住んだエピソードは有名ですが、その後綾野剛は「コンビニに行って来る」といって帰らなかったそうです。
綾野剛はすごいことをするなあと思われるエピソードですね。
直人が亡くなっていたことを知り、ショックを受ける優馬の演技は、見ているこちらもとても心が苦しくなるシーンでした。

 

映画館で全部を見終わった後、少しの間立てませんでした。
哲也と愛子は疑いが晴れてよかったねという思いと、信吾が犯人だったのかという衝撃、そして直人が死んでいたことを知り悲しい気持ちと、優馬の後悔が頭の中に一緒にあって、後をひく思いで心にずしんとくる映画でした。

 

まとめ

豪華な俳優陣の演技が素晴らしく、人間の信用や不信といった重いストーリーですがかなり引き込まれました。鑑賞後の後味は決して良いものではありませんし繊細な人には辛い映画かも知れませんが見ごたえのある作品です。

 

また怒りの監督、李相日の作品の『悪人』もおすすめ。怒りでは優馬を演じた妻夫木聡と深津絵里がメインキャストの作品です。

 

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